エクアドル・ヤスニ国立公園について②

アマゾンの苗木(筆者撮影)

前回は主にエクアドルのアマゾンのことについて書きました。今回はヤスニ国立公園とその地下に眠る石油についてもうちょっと詳しく述べていきたいと思います。

ヤスニ国立公園を含めたアマゾンの熱帯雨林は生物多様性が高いだけではなく、その森林が二酸化炭素を大気に放出せずに封じ込めておくことができるため、地球の肺とも言われています。つまりアマゾンの下の石油を開発することは、生物多様性が壊されるだけでなく、森林伐採などが進むことで気候変動にも大きな影響を及ぼすと考えられています。さらには、この地域には未だ昔ながらの生活様式で暮らす先住民がいることも確認されています。

そういうことで、エクアドル政府のジレンマは環境・先住民の人権保護と開発の板挟みです。ヤスニ国立公園を保護すれば、その地下にある石油の開発はできない。しかしエクアドルの人口の1/3は未だに1日1.25ドル以下の貧困線での生活を強いられています。国の発展のためにも、貧困脱却のためにも、経済を強くしていきたい。そのためにも石油の開発は不可欠ということになるわけです。

そこでエクアドル政府が思いついた画期的な方法が、ヤスニ国立公園の地下にある石油を開発しない代わりに、その分寄付を募るというものです。石油を開発してたら得られたであろう収入に近い額の寄付を得ることが出来れば、ヤスニ国立公園の生物多様性を犠牲にすることも、気候変動へ悪影響を及ぼすことも、先住民たちの生活を脅かすような真似もしなくて済むわけです。さらにそのお金で貧困の脱却を図ることも可能(これはその寄付金の恩恵が平等に分配されることが大前提ですが)というまさに一石三鳥とも言える解決法なわけです。

エクアドルのコレア大統領によって、2007年の国連総会でこのプランが発表されました。当時は「またまたこのおっさん何を言ってるんだか」という反応もあったそうですが、私もいち早くこの動きに目をつけ、大学院一年目の2008年秋にこのプランについて論文を書いたわけです。このプランはThe Yasuní-ITT initiativeと名付けられたました。うろ覚えですが、ITT Ishpingo- Tambococha-Tiputiniの略で、ヤスニ国立公園内部にそう名付けられた油田があったんだと思います。とまれ、具体的な内容としては、ITTの石油には今後一切手を付けない。その代わりとして、ヤスニ国立公園に眠るとされる石油を開発することで得られたであろう収入の半分(36億ドル=約2800億円とエクアドル政府は主張)を13年という期間で寄付として受け取る、というものです。

ビデオもあるみたいです。

ノルウェーやドイツなどが当初から興味を持っているとされていたこのプランですが、その後正式に寄付金を管理する基金が作られ、The Yasuni-ITT Trust Fundという名前でUNDPがこの基金を管理しています。前回の記事で触れたヤスニ国立公園についてのニュースの一つは、この基金についてです。当初は政府や民間セクターからの最低10万ドルの寄付しか受け付けてなかったのですが、それが変更となり、これからは個人の寄付も25ドルから受け付けるという内容を発表したUNDPについての記事でした(元の英文記事はココから)。むしろ今までなんで受け付けてなかったのかが不思議なぐらいです。2008年の大統領選を制したオバマ大統領への寄付金も、個人の少額の寄付が多きな力となったことに鑑みても、各国政府や大企業からの寄付金がもちろん大事ですが、民衆が力を合わせた時の力というのは侮れないものだと思います。

この記事は今年の9月のものだったのですが、その数カ月後、今度はこの新聞記事で、最初の目標だった1億ドル(約78億円)の寄付が集まったことが明かされてました。記事によると、9月の時点で3-400万ドル(2.3-3.1億円)の債務スワップによるイタリアからのコミットメントしか得られてなかったようですが、その後民間セクターからの寄付が大幅に増え、目標を達成したとのことです。これからも毎年3.5億ドル(270億円)程度が集まれば、ITTの油田は開発されずに済むという寸法でうす。最初の記事によると、こうして集まった寄付は再生可能エネルギーの開発、病院、学校、インフラ建設などの社会整備に使われる予定だそうです。

アマゾンの中にて(筆者撮影)

これに似たアイデアとして、Reduced Emission from Deforestation and Forest Degradation(REDD、日本語では「森林減少と森林劣化による排出の削減」)というのがあります。これは、森林伐採が温室効果ガス排出につながることに着目し、森林を保護することで二酸化炭素の排出を抑え、森林伐採で排出されたであろう量の二酸化炭素分の炭素クレジットを、森林を保護した国の政府が受け取れるというアイデアです。実施されれば、主に先進国の政府や企業が途上国での森林保護に投資する代わりに、炭素クレジットを受け取る事可能になる、という枠組みになると思います。それをこれについても大学院一年目に論文を書いたので、いつか機会があればちょこっと紹介したいと思います。

個人的に、石油があるからといってすぐに開発せずに、環境保護や人権問題を考慮してこういった他のオプションを模索するエクアドル政府はすごいなと思います。あなたもこの記事を読んでエクアドルの努力に協力したいと感じたら、UNDPが寄付を受け付けてますので、クレジットカードを準備してこちらからどうぞ!

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One response to “エクアドル・ヤスニ国立公園について②

  1. Pingback: ヤスニITTプロジェクトについて語ってみる | un Educador en Ecuador

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